自宅へ帰宅した私は家族への挨拶もそこそこに、自室へ駆け上がる。そしてベッドに腰掛けると、バッグにしまったままだったスマートフォンを取り出した。

柊斗と話して、私はやっとあかりと向き合う決意を固めることができたのだ。この気持ちが揺らがない前に、行動に移さなければ。

私はあかりにメッセージを作成する。内容は、明日どこかの時間で会えないかというもの。明日は日曜日。あかりに用事が入っていたらどうしようかなあと考えつつも、私は作成したそれを勢いのまま送信した。

それから一時間後。夕飯を済ませた私は、充電器に差しっぱなしにしていたスマートフォンを取りに行こうと自室へ向かう。

果たして、あかりから連絡は返ってきているのか。少しのドキドキを抱きつつ画面の明かりをつけると、……そこには、彼女の名前が表示されている。

《明日、空いてるよ》

たった一文の、短いメッセージ。私は、ふうっと小さな溜め息を吐くと、胸をそっと撫で下ろす。とりあえずは、一安心だ。

それからあかりと何度かやり取りをして、明日の朝九時頃に、私とあかりの家を結ぶ中間点に位置する公園で待ち合わせをすることにした。

そこは日陰も多くあり涼しく、閑静な住宅街の一角に存在している。子どもを連れて遊んでいる親子をたまに見ることはあるが、そんなに利用回数が多いわけではないと思う。むしろ誰も利用していないことの方が多いだろう。

だから、あかりとゆっくり話すことができるのではと考えたのだ。

その日の夜は、なかなか眠れなかった。今まで誰かに真っ直ぐ自分の意見を伝えることなんてほとんどなかったから、上手く伝えられるのか。何より、あかりは私のことを受け止めて許してくれるのか。

……もう、友達じゃないって言われたら、どうしよう。

考えれば考えるほど、恐怖心は気持ちは募るばかりで。私は様々な不安を心の底に残したまま、夢の世界へ旅立っていった。


翌日。予定通りに起きて準備を済ませ、遅れないように自宅を飛び出した私は、頭上に広がった空を仰ぐ。

今日は驚くほどの快晴だ。時刻がまだ午前中いうことも関係するのか、辺りを流れる風も暖かいというよりは冷ややかで、暑いとは感じない。たったそれだけで、全てが上手くいくような気がするのだから、天気って不思議だと思う。

この青々とした広大な空の向こう側に、神様がもしもいるのだとしたら。どうか、私とあかりを優しく見守っていてください。……なんて、神頼みなんて私らしくないか。

少しだけ緩んだ頰。太陽の光が一層強まったこの世界は、明るく綺麗に輝いている。

……よし、行こう。あかりに、きちんと自分の思いを伝えるために。今の自分から抜け出して、一歩成長した自分に会うために。