そして翌日。ありがたくないことに、私の予感は見事的中してしまうこととなる。

それは、放課後のことだった。

今日の日直に当たっていた私は、担任の先生から頼まれて、明日のSHRの時に配られる保護者へのお知らせの紙をまとめていた。数枚あるそれを順番に並べ、ホッチキスで止めなければならないのだが、クラスの人数分作ろうと思えば少しばかり大変だ。

私は一人で机に向かい合い、ひとつひとつの作業を黙々と進めていく。

それでもやっぱり終わりそうになくて、あと一時間くらいはかかるだろうなあと予測でき、静かに肩を落とす。その時、作業していた机の端っこに覆いかぶさるように影がかかり、誰かが目の前に立ったのだと分かった。

パッと顔を上げた私の視界に映ったのは、さっきまで教室の隅で日向ぼっこをしながら談笑していたクラスメイトの女子二人。彼女たちは間違いなく私を見ていて、あかり以外の女子とは上っ面の付き合いしかしていない私は、急な出来事に驚きを隠せない。

「凪ちゃんだよね?あんまり話したことはないけど、いつもあかりちゃんと一緒にいるから。それ、日直の仕事で任されたんでしょ?もしよかったら、部活に行く前に少しだけ時間あるから、私たち手伝おうか?」

そしてその後に言われた台詞にも驚いた。

彼女たちは私が作業を黙々とやっている様子を目にして、声をかけてくれたんだろうか。……二人が私に向けてくれた優しさが嬉しくて、胸の中心がほんわかと暖まる。……でも。

「……ううん、大丈夫だよ。要領は頭に入ってきたし、ただ紙を重ねてホッチキスで止めるだけの単純作業だから、あと少しでできそう。二人の気持ちはすごく嬉しいよ、本当にありがとう。せっかく声をかけてくれたのに、ごめんね」

私はその優しさを、断ってしまった。

理由ははっきりしていて、声をかけてくれた嬉しさよりも、手伝ってもらう申し訳なさの方が勝ってしまったから。心のどこかでは誰かの手助けが欲しいと思っていたのに、彼女たちのことを考えすぎるあまり、ありがたく申し出を受け入れることができなかったのだ。……素直に、手伝ってほしいと言えばよかったのに。私にはまだそれができず、自分は馬鹿だなあと心の中で苦笑する。

彼女たちは少し迷っていた様子だったけれど、ほどなくして小さく首を縦に振った。

「じゃあ私たち部活に行くけど……もし助けが必要だったら、今日じゃない日でも、いつでも声をかけてね」
「うん、本当にありがとう」

最後まで私に優しい言葉をかけてくれる彼女たち。そんな二人に心からのお礼を告げると、やんわりと笑ってくれる。それから彼女たちは部活へ行くために教室を後にした。