しばらく続く沈黙。今になって、柊斗は私とこうしているよりも、一人でいた方がまだ心地よい時間を過ごせたんじゃないかとネガティブな思考が姿を現す。
そう思えば私の悪い癖に拍車がかかり、柊斗にどんな話をしたらいいのかが分からなくなり、余計に無言になってしまった。
本当に情けないなあ。あかりだったら、楽しい話の一つや二つ、簡単にできただろうに。
「ねぇ、凪」
少し憂鬱になり顔を俯けたら、そんな私の様子を見てか柊斗が私の肩をトントンと叩く。顔を上げた先には、優しい笑みを浮かべている柊斗がいて。
「最近、よく目を見て話してくれるようになったよね。俺、それがすごく嬉しいんだ」
彼はそう言って、きゅるりと目尻を落とす。
「ほら、凪、人見知りって言ってたじゃん?俺も人見知りだけど、凪は俺以上の人見知りだってことが話していて分かったから、徐々に仲良くなれたらって思ってたんだよね」
「……そうなの?」
「うん。初めの方は話しかけても、少し経ったらすぐに目を逸らすし、どことなく表情が固かったから。でも最近の凪は、俺から目をあまり逸らさず話してくれるようになったから、少しは凪に近付けたのかなあって」
恥ずかしげもなく話す柊斗の台詞を聞いていると、なんだか私の方がむず痒い気持ちになる。
……こっちの方が、恥ずかしいじゃない。柊斗とは反対に妙な恥ずかしさを感じた私は、柊斗から思わず視線を逸らした。柊斗はそんな私を見て笑うと、再び口を開く。
「でも、もう少しだけ凪のあどけない笑顔を見てみたいなあ」
「……何よ、それ」
「なんかね。やっぱりまだ緊張しているのか、俺が見てる凪の笑顔は、本当の笑顔じゃない気がしてさ。……いや、ちょっと待って?俺、すごく失礼なこと言ってない?」
柊斗の放った言葉に、胸の奥がドキッと大きく音を立てる。自分が失礼なことをしたかもしれないと、目の前で眉を下げ慌てる柊斗。けれど失礼だとは思っていない。だって、柊斗の言ったことは恐らく本当だと思うから。
本当の笑顔じゃない気がする、と柊斗は言った。その通り、私はいつも周りに合わせるように笑っているばかりなのだ。そこには自分も何もない。
四人の前では上手く笑えていると思っていたし、実際にみんなと過ごす時間は何にも変えられないくらいに楽しい。それでも心から笑えていないということは、やっぱり根底に彼らにまっすぐ自分のことを伝えられない情けなさだったり、こんな私と一緒にいてくれる申し訳なさだったり、それらが邪魔をするからだろうか。
「な、凪……?ごめんって、本当にごめん」
私の沈黙を怒りと捉えた柊斗は、慌てたように私の顔色を伺う。