私の中で、蓮のことを心配に思う気持ちがふつふつと湧き上がる。蓮が入院すること自体は喜ばしくないことに、もう珍しいことではなくなった。それでも心の奥底で激しく動揺している自分を落ち着けるように、私は小さく息を吐く。

「凪……?大丈夫?」

私の顔の前で掌をひらひらさせるあかりの言葉に、ハッと我に返る。……いけない、今は彼女たちと遊んでいるのだ。

「うん、大丈夫。お母さんから夕飯はどうするのかってメッセージがきてて。ちょっとだけ連絡を返す時間をもらってもいいかな」

揺れる心をひた隠しにするように、私は笑う。上手く笑えていたのか、あかりたちは何も言わず、小さく頷いてくれた。

私は急いでキーボードをタップし、お母さんに了解だと伝えるメッセージを打ち込み、送信する。

蓮の入院のことをあかりたちに伝えなかったのは、この楽しい雰囲気を壊したくなかったから。ただそれだけのこと。

だってきっと蓮のことを知れば、心優しい彼女たちは自分のことのように心配してくれる。でも私はそれがとても嫌だった。……自分の言動のせいで、今日という日を台無しにしてしまいたくない。

もちろん私にとって弟も大切だが、こうして一緒に隣を歩いてくれる友達も大事だ。さっきも言った通り、蓮には医者も看護師も、両親だって付いている。だから、大丈夫だ。

「お待たせ、みんな。時間くれてありがとね」

申し訳なさそうに頭を下げた私を見て、みんなは「いいよ、頭を下げることじゃないよ」と明るく笑ってくれた。

それからはみんなで目当ての映画を鑑賞し、映画を見終えた後はその感想を語らったり、雑貨屋を見て回ったりと充実した時間を過ごした。夕飯は柊斗がずっと行きたかったと言っていたお好み焼き屋に行き、頰が落ちそうなほどに美味しいお好み焼きをお腹いっぱいに頬張る。

そして、時間はあっという間に過ぎ去り、別れの時がやってきた。

私たち四人は帰りの電車へ乗り込み、それぞれの自宅を目指す。途中の駅で悠真くんと柊斗は下車し、あかりと私はもうしばらく列車に揺られながら帰宅した。

「じゃあまたね、凪。次は学校で」

最寄り駅につき、あかりとも別れ、私はひとり家路を辿る。街灯に照らされているものの、道中はとても暗く、コツコツと響く自分の足音が怖くなった私は少しだけ歩く足を早めた。