「お、あれか。そういえばもう公開されてるよな?いいじゃん、みんなで観に行こうぜ」

途端に目を輝かせた悠真くんの言葉にみんなが満面の笑みで頷き、それを合図にこれからの私たちの動きが決定する。

私たちは食べ終えたアイスクリームのカップをきちんと捨てた後、ネモフィラ畑を出発し、ショッピングモールへと向かった。

駅からショッピングモールへは本当に近く、直結の連絡通路を使用すれば五分ほどで辿り着いた。

私たちは先に映画館へ向かい、チケットの購入を済ませた後、同じモール内の七階にある人気のイタリアンレストランへ直行する。

時間もちょうどお昼時であったため、三十分から小一時間ほど並ばなければいけないのかと思っていたが、運が良かったのか十分くらい待てばすぐ席に通された。

朝から朝食とアイスクリームしかお腹に入れていないということもあり、とてもお腹が空いていた私たちは、そこで各々パスタやピザを頼み、空腹を満たす。

食事中は、これから鑑賞する映画の話や普段の学校の話で盛り上がり、楽しいひと時を過ごせたと思う。気付けば映画の入場受付時間の約十分前まで時間が狭まってきていた。

「じゃあ、そろそろ行きますか」

そう言って立ち上がった悠真くんに続くようにみんな席を立ち、レジカウンターに向かう。そして別々にお会計を済ませ、映画館へ向かおうと足を進め始めた、その直後のこと。

ジーンズの後ろポケットに入れていたスマートフォンからブブッと振動が伝わったので、私は歩きながらスマホを取り出し手に持つ。

誰だろう、と思いながらスマホを操作し画面を表示すれば、メッセージの送り主はお母さんだった。

「……え?」

その内容を見て、進めていた足が思わず止まる。

「凪?」

足を止めた私に気付いたあかりが同じように立ち止まり、不思議そうな顔でこちらを見つめた。彼女に続くように、柊斗や悠真くんも振り向きその場で立ち止まる。

「……ごめん、少しだけ待ってくれる?」

だから私はそれだけ告げると、再び画面に視線を落とした。

《蓮のことなんだけど、また入院することになりました。午前中に診察をしてもらったら、少し肺炎気味だそう。症状が落ち着き次第退院できるみたいです。初日は蓮もきついだろうから、お母さんもお父さんも付き添いで病院に泊まるわ。お夕飯はお友達と食べるか、家にあるものを適当に食べてください。本当にごめんね。よろしくお願いします》

全ての文をもう一度自分の中で読み返す。

……ずっと体調が思うように回復しないなあとは思っていたけれど、まさかまた肺炎になりかけていたとは。

蓮は大丈夫だろうか。いや、でも入院が決定したということは、常に医者や看護師がそばにいる状態なのだから、自宅へいるときよりは安心か。