一斉に柊斗に視線を移した私たちは、その柊斗の考えとやらを聞こうと耳を傾ける。
「朝降りた駅に、直結のショッピングモールがあるのは知ってる?」
「……ああ、一年前くらいに完成してオープンしたところだよね。お母さんと行ったことあるかも。確か悠真も一度行ったことあるって言ってたよね?」
「うん。あかりと同じく、家族と行った」
あかりや悠真くんはどうやら足を運んだことがあるみたいで、すぐに理解したみたいだ。私も実際に行ったことはないけれど、前に地方ニュースで特集が組まれていたのを目にしたことがあるから知っている。
「そこのショッピングモールに行ってさ、まず昼ごはん食べて、そのあと映画を観に行かない?そしてそのあとは適当に店を見て回るなりして、夕飯を食べるのにいい時間になったら食事をしてそれぞれ帰る。……どう?」
柊斗は言い終わると、少しだけ心配そうな面持ちで「どこかダメなところがあったら変更してくれていいから」と付け足した。
だが、全員柊斗が考えてくれた案に賛成のようで、意見するものはいない。
「はいはい、あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
そう言って身を乗り出したのはあかりだ。
「映画って、何を観るの?」
首を傾げて放たれた言葉に、他の人たちも確かに、と口を結んだ。
映画といえば、様々なジャンルで溢れている。でも実のところ、私はホラー映画やアクション映画があまり好きではない。もともと怖い映像は嫌いで、人同士が過激に攻撃しあっているところを目にするのも苦手。 確かに、みんなが何を観ようと考えているのかは私も気になる。
とはいえ、現在はどのような映画が公開されているのだろう。それが分からず、私はスマホを取り出し映画の公開情報を探ろうとした。……その時だった。
「……あ、そうだ。あれはどうかな?」
何かを思い付いたように、ぱあっと目を輝かせたのは、疑問を投げかけたあかり本人だ。
「おいあかり、あれ、ってなんだよ」
「ほら、みんなでちょっと前に話してたやつだよ。白血病に侵された主人公の女の子が、ひとりのヒーローのような男の子と出会って初めて恋をするっていう内容の。全員が観たいなって言ってたやつ」
それを聞いて思い出したのは、確か四人で話すようになってまだ間もない頃。
悠真くんのマイブームが映画鑑賞だと知ったあかりが、近いうちに公開されるものの中で気になる映画はあるのか、と聞いた時に、悠真くんはさっきあかりが言っていた映画を答えていた。
その物語は、余命幾ばくもない高校生の主人公が、残された時間で恋を知っていくという王道の純愛もの。
悠真くん以外もその映画は気になっていたようで、全員が観たいと興味を示していた。