かくして私と市山くんは、二人で励まし合い、数日間この施設に通って、1800の会までにポイントを上げることに成功した。
効率最最優先のハードプログラムのおかげで、なんとか間に合った。
その日の交流会会場は、老舗ホテルの屋上だった。
独身者限定というわけではなく、オフィス街で働く現役世代の交流会も兼ねている。
夜風にのって流れるジャズの生演奏と、きらびやかなイルミネーション。
今回は会場の各テーブルで、マジシャンやジャグリングも開催されている。
お酒も出る大人の立食パーティー形式だ。
市山くんと会場を訪れた私は、受付でたけると荷物を預け、マイナンバーカードを提示する。
その場で印刷された認証コード付きの名札を首にかけた。
名前の横にプリントされた今回の色は、赤味のオレンジ、といったところかな?
ここではいつものアプリは禁止。
ゆったりした時間と空間を提供できるのも、事前審査の信頼があってこそ出来ること。
「あ、明穂さん、やっぱり僕と似たような色調になっちゃってますね」
「ま、そうなるだろうね」
市山くんのは、私よりやや黄色っぽいオレンジ。
十二色環の色合いの選定は、毎回会場ごとによって異なるが、この色合いの近い人間ほど、趣味や行動・思考パターンが近い、相性のよい人間ということになる。
ちなみに、既婚者のカードは背景が黒で、非婚者は白。
「明穂さんって、1800の会は来たことあるんでしたっけ」
彼が何気なく差し出した手に、左手をのせる。
「まあ、さくらに誘われて、何回かは」
「僕は初めてなんで、ちょっと緊張してます」
さりげなくエスコートされて、会場に入る。
さすが1800越え男子。
そんな仕草もさりげなくて、全くの嫌みがなく実に好印象。
「わ! すごいお洒落ですね!」
最少限度の照明だけに照らされた会場に、三百人程度の参加者が集っていた。
着飾った華やかな衣装と、こぼれる笑い声が澄んだ夜空に響く。
「明穂さんの場合、まずは腹ごしらえですかね」
いたずらっぽく笑った、くせっ毛の頭が振り返る。
「ダイエット解放祝いといきますか?」
「ふふ、よろしいですわよ」
「ではお嬢様、まいりましょう」
片膝を軽く折って差し出される手。
市山くんが同じ部署に配属されたのは、私のためだったんじゃないかとさえ思えてくる。
ウエイターが取り分けてくれた皿を受け取って、本戦に備えた。
「まめに通ってたら、顔見知りも増えるんですかねぇ」
「そのための会だからね」
「明穂さんは、まめに通うつもりなんですか?」
「できればそうしたいと思ってるよ。こういう所なら、ちゃんとしてるし」
「男性恐怖症も、発症しない?」
「リハビリの一環だと思ってる」
「じゃ、僕も頑張ろう」
にこっと笑った彼の顔は、純粋にかわいらしくて、素直に見ていられる。
「あ、局長だ」
市山くんの視線の先には、バーコード頭の森部局長がいた。
同じようなおじさまと、熱心に何かをしゃべっている。
「なにしゃべってんのかな」
「どうせ釣りか、体脂肪の話しじゃないんですか」
「ふふ、確かにそうかもね」
いつもオロオロしてる局長の、あんな真剣で真面目な横顔、最近ではめったに見たことないな。
効率最最優先のハードプログラムのおかげで、なんとか間に合った。
その日の交流会会場は、老舗ホテルの屋上だった。
独身者限定というわけではなく、オフィス街で働く現役世代の交流会も兼ねている。
夜風にのって流れるジャズの生演奏と、きらびやかなイルミネーション。
今回は会場の各テーブルで、マジシャンやジャグリングも開催されている。
お酒も出る大人の立食パーティー形式だ。
市山くんと会場を訪れた私は、受付でたけると荷物を預け、マイナンバーカードを提示する。
その場で印刷された認証コード付きの名札を首にかけた。
名前の横にプリントされた今回の色は、赤味のオレンジ、といったところかな?
ここではいつものアプリは禁止。
ゆったりした時間と空間を提供できるのも、事前審査の信頼があってこそ出来ること。
「あ、明穂さん、やっぱり僕と似たような色調になっちゃってますね」
「ま、そうなるだろうね」
市山くんのは、私よりやや黄色っぽいオレンジ。
十二色環の色合いの選定は、毎回会場ごとによって異なるが、この色合いの近い人間ほど、趣味や行動・思考パターンが近い、相性のよい人間ということになる。
ちなみに、既婚者のカードは背景が黒で、非婚者は白。
「明穂さんって、1800の会は来たことあるんでしたっけ」
彼が何気なく差し出した手に、左手をのせる。
「まあ、さくらに誘われて、何回かは」
「僕は初めてなんで、ちょっと緊張してます」
さりげなくエスコートされて、会場に入る。
さすが1800越え男子。
そんな仕草もさりげなくて、全くの嫌みがなく実に好印象。
「わ! すごいお洒落ですね!」
最少限度の照明だけに照らされた会場に、三百人程度の参加者が集っていた。
着飾った華やかな衣装と、こぼれる笑い声が澄んだ夜空に響く。
「明穂さんの場合、まずは腹ごしらえですかね」
いたずらっぽく笑った、くせっ毛の頭が振り返る。
「ダイエット解放祝いといきますか?」
「ふふ、よろしいですわよ」
「ではお嬢様、まいりましょう」
片膝を軽く折って差し出される手。
市山くんが同じ部署に配属されたのは、私のためだったんじゃないかとさえ思えてくる。
ウエイターが取り分けてくれた皿を受け取って、本戦に備えた。
「まめに通ってたら、顔見知りも増えるんですかねぇ」
「そのための会だからね」
「明穂さんは、まめに通うつもりなんですか?」
「できればそうしたいと思ってるよ。こういう所なら、ちゃんとしてるし」
「男性恐怖症も、発症しない?」
「リハビリの一環だと思ってる」
「じゃ、僕も頑張ろう」
にこっと笑った彼の顔は、純粋にかわいらしくて、素直に見ていられる。
「あ、局長だ」
市山くんの視線の先には、バーコード頭の森部局長がいた。
同じようなおじさまと、熱心に何かをしゃべっている。
「なにしゃべってんのかな」
「どうせ釣りか、体脂肪の話しじゃないんですか」
「ふふ、確かにそうかもね」
いつもオロオロしてる局長の、あんな真剣で真面目な横顔、最近ではめったに見たことないな。