「捨てられる、てどういう事?」
「私が婚約者になって一か月後に、新入生が入って来たんだけどその中の男爵令嬢に王太子様がべた惚れしてるのよぉ……」
 マジかっ!?
「でも王太子様はもう卒業してるのよね?」
「卒業はしてるんだけど理事として在籍してるのよ、それで時々学園の様子を見に来るのよ」
 因みにレイーナは3年生、私と王太子様は卒業している。
「その様子見の時に男爵令嬢を見て惚れた、と言う事ね」
 レイーナは頷いた。
「でも王太子様は確か王教育に入っているのよね、貴女も王妃教育を受けてるはずよね」
「それなんだけどね……、王太子様が『古い風習は廃止する!』て……」
 ……なにそれ?
 私が王妃教育で苦しんでいた時は『王妃になるんだったら当たり前だろ?』て優しい言葉もかけてくれなかったくせに自分がやりたくないから廃止なんて言ったんだろ?
 私の10年返せ、コラ。
「私はお姉ちゃんが頑張っていたのを見ていたから覚悟はしていたんだけど……、流石に止めたよ? でも全然聞いてくれなくて、『君は僕が選んだ、それだけで王妃になる条件は整っているんだよ』て……、私、流石に引いたよ」
「冷静な判断が出来る様になっただけで成長したわね」
「だって、学園中から白い目で見られてるんだもん、……勿論、そういう事をやっちゃったから反論は出来ないんだけど。『姉から婚約者を奪った』、『自作自演で姉を追い出した』てヒソヒソ言われるんだもん」
「それは自業自得よ」
 ピシャリと言ってやった、レイーナはウっと胸を抱えた、本当の事だから仕方が無い。
「それで……、元両親や国王様達には相談したの?」
「話せる訳が無いよ……、無理矢理お姉ちゃんから奪ったんだし王妃様から嫌われてるし……」
 王妃様は私の事を凄く大事にしてくれていたからなぁ、お別れが言えなかったのは心残りだった。
「王妃様は今、王様と別居中なの。その王太子様の件で大喧嘩して王妃様は実家に帰ってしまって……」
「それは参ったわね、王妃様は王太子様の唯一のストッパーになる訳だし、問題はその男爵令嬢よね、名前はわかる?」
「確か……『ミリアヌ・カルトス』て言う名前だったわ」
 ん? カルトス?
 何処かで聞いた事ある様な……、あっ!
「それ、確かザリウス家とライバル関係にある『コテース』家と親戚関係にある家だわ」
「えっ!? それってもしかして……」
「うん、ザリウス家を潰すつもりで送り込ませたかもしれない」
 自分で言うのもなんだけど貴族の世界って本当に陰謀とか渦巻いてるのよね……。