「お姉ちゃん! ごめんなさいっ!!」
 ……え~と、コレはどういう事なんだろう。
 仕事から帰ってきて自宅に戻って来たら玄関に妹、あぁ元が付くけれども正座して待っていた。
 申し遅れました、私は『ルビーナ』と言います。
 今は近所の食堂でコツコツ働いていますが実は元は貴族、しかも公爵令嬢でした。
 元実家は『ザリウス家』という『ホテリナ王国』では名が知れた名家です。
 更に言えば私はこの国の王太子の元婚約者でした。
 そんな私が何故平民として過ごしているか、と言えば原因は目の前で土下座している元妹『レイーナ・ザリウス』にある。
 この妹は両親に甘やかされた結果、我儘、自己中、甘えるのが得意な典型的なお嬢様性質になってしまったのだ。
 私がお小言言ったら『お姉様が苛めるぅ』と親に泣きつき私が注意される、と言う納得いかない展開になってしまう。
 まぁ、そういう性格なんだな、と思い半ば諦めていたら、1年前にやらかした。
 貴族学園の卒業パーティーで私は王太子に婚約破棄を一方的に宣告された。
 そう、レイーナがいつの間にか王太子と良い関係になっていた。
 しかも、私がレイーナを苛めたとかあらぬ噂を吹きこまれていた。
 こうなると私が何か言い訳を言っても聞く耳持たずで私は断罪されてしまい貴族会からの永久追放を宣告された。
 そこからの流れは最初から仕組まれていたんじゃないか、というぐらい私は坂道を転がり落ちていった。
 両親からは『妹を苛める奴は我が家に入らない!』と勘当を言い渡され、家を追い出された。
 このままだと奴隷にされてしまう、と感じた私は平民街に行き長屋の一室を借りてそこで生活をする事にした。
 最初は一人暮らしなんて初めてで料理も出来なかった。
 しかし、お隣に住んでいる家族が優しくて色々としてくれた。
 料理のやり方、掃除の仕方を一から学んだ。
 更に就職先まで紹介してくれて現在に至る。
 そんな中、突然レイーナが現れたのだ。
 私を見るなり土下座だ。
 色々言いたい事はあるけれど、とりあえず冷静になってみよう。
「レイーナ……、とりあえず中に入りなさい」
 まずはレイーナを家の中に入れた。
「一体なんで此処にいるの? ていうかどうして私が住んでいる場所がわかったの?」
「……お友達がお姉ちゃんに似た人を平民街で見た、て聞いたから」
 見られてたか、私。
「お姉ちゃんが見た事の無い凄い良い笑顔で接客してた、て聞いて……」
 あぁ、そういえば私、王妃教育のせいで表情とか感情とかコントロール出来たんだよね。
 外交で表情を感情に出てはいけない、と厳しく教え込まれた結果、王太子からは『可愛げがない』と言う素晴らしい言葉をいただきましたよ。
「まぁ、今は凄く楽しいし充実しているからだと思うけど……、貴女はどうなの?」
 そりゃあ私を蹴落として王太子妃の座をゲットしたんだから幸せになっていないと困る。
 いや、正直どうでもいいけど。
 しかし、レイーナの口から出たのは私の想像を越えた発言だった。
「私……、捨てられそうなのぉ」
 ……え?