僕の腕の中でひなせが喘ぐ。僕たちは互いの精気を奪って与えあう。躰をひとつに繋げそれが満ちるまで。

「ゆい・・・っ、あッ・・・っ」

押し上がってくる本能の波に二人とも達し、そして果てた。荒かった呼吸も次第に落ち着き、ひなせも僕も充足した疲労感の中、とろとろと微睡む。

躰を繋げた後にこんな余韻に浸れるのは彼女以外ない。ひなせ以外はただの摂食行為に過ぎないのだから。

「・・・やっぱり由伊がいちばんいい・・・」

倖せそうにはにかんで、ひなせは僕の胸元に頬を寄せた。柔らかな感触が素肌に心地いい。少し茶色がかったその髪を撫でてあげると、目を閉じてされるがままになっている。

兄妹だという事よりも、この世界にふたりと同じものは他に存在しないことが、僕達をさらに深めていく。今はまだ躰の安定しないひなせは自分に惑って、でも精気を欲する欲望にも抗えない。

だから僕は躰から絡め取っていく、ひなせが僕から離れられないように。他の誰がひなせを抱いても絶対に戻ってくるように。

・・・愛だとかそんな言葉ですらない。この、狂気のような僕の想いは。

もっともっと、ひなせを壊したい。あられも無く欲しがらせて啼かせて、そうしたら・・・ひなせは何も考えなくていい。

君が描いてたありきたりの人生。恋のひとつさえ叶わなくなったと、笑いながら泣いた君。ひとの精を喰らって生きる現実とがせめぎ合って、ひなせを辛くするから。

それでも、ひとの世界にまだ未練のあるひなせは、朝になると会社へと出かけてゆく。ときどき夜に男と逢ってから戻っても、僕は変わらない。ベッドにひなせを沈め、僕の全部で上書きをする。

「・・・僕がいらなくなったらいつでも言って」

「いや・・。ずっといて・・・由伊」

すがるような眼差しで見上げるひなせの髪に額に、幾度もキスを落とし。心の中でどこか願ってた。

ひなせが階堂倭人の命を過って奪い尽くす。・・・そんな幕引きを。