「ゆい、・・・っ」

「由伊じゃねぇし、・・・ったく」

今夜は支癸に組み敷かれながら、そう口走ったみたいだった。
 
「おまえが俺んとこ来る時はたいがい、オトコと会う前だよな」
 
まるで世間話でもするかのように変わらないトーンで、あたしの理性を飛ばしていく。

「手加減するくらいならやめとけ。命ごとくれてやるってぐらいの男なら、ここにもいるだろが」

「そん、なの・・・っっ」

「べつに構わねぇよ俺は」   

手加減できるように、無月か遊佐か支癸の純度の高い精が欠かせない。でないときっと殺してしまう。倭人の精気を全部吸い取って死なせてしまう。

情が深くなればなるだけ抑えの利かない衝動。いくつも歯止めをかけて、愛も好きも境界線を引かない半端でいいの。倭人を殺す愛しか持たないあたしは。

支癸が低く言う。

「・・・死んでも幸せだって言わせるぐらい惚れさせりゃ、後悔しねぇのに」

命ごと背負う勇気がない。あたしにはまだ。

どこかでまだ、自分が“ひと”だと思いたがってるのかもしれない。

絶望するのが怖いのかも、・・・しれない。