人間の精を喰らう。自分がそういう者なのだと知ったのは18の時だった。

 あたしより早く生まれた由伊を見ていて、みんなは承知していたんだろう。突然倒れたあたしに必要なものが何かを、惜しむこともなかった。


 倒れる少し前からあたしはすごくおかしかった。
 由伊や支癸に何気なく触れられるたびに、熱っぽさが増してたまらない。収まる方法が分からないうちに、今度は“乾き”に苦しんだ。
 足りない。潤いたい。でも何が欲しいのか分からない・・・!
 
 どうにもできない自分を誰に相談もできずに我慢し続けたあげく、ある朝あたしは、自分のベッドから起き上がることもできなくなっていた。

『ごめん、ひなせ。気付いてあげなくて』

 由伊の哀しそうな顔。

『もう大丈夫だよ。心配しないで・・・』

 それからの事は頭の中がふわふわとしていて、あまり良く憶えていない。

 ただ判ったことは。
 あたしと由伊は。不老である代償に人の精が不可欠なこと。
 まるで躰が水分を欲しがるように、自制が利かないこと。
 人と交わることで得られること。
 
 無月を、支癸を、遊佐を受け容れて、最後には由伊を。放たれる精を吸い上げて満たされるまで。

 それは本能に刻まれている生命活動。混じった人間の遺伝子がそうさせるのか、それも解らない。


『・・・でも、これが僕達の摂理だ』

 あの日から由伊は一日と空けずあたしを抱く。
 ともすれば考えそうになるあたしを押し流すように。

『・・・きょうだい、なの、に・・・っ』

『ひなせ・・・、だから赦されるんだ。ひととは違う僕達だから・・・』
 


 それを愛と呼んでも。・・・いいのかな。