「ゆい・・・っ、・・・アァ、やっ・・・」

 由伊に翻弄され、あたしはもう自分では何もコントロール出来ない。
 ひたすら官能の渦に呑み込まれて喘ぎ続ける。
 吸いつかれ、刺激を与え続けられる躰の真ん中が、まるで自分の全てのような。そこにしか自分が無いような。
 そしてどんどん押し寄せてくる波。波。波。
 一瞬でスパークして、がくりと力が抜け落ちる。

 荒い呼吸を繰り返し、シーツの波間に沈むあたしに寄り添うようにして、由伊は、気持ちよかった?と訊いた。

「・・・うん・・・。由伊が一番きもちいい・・・」

 遊佐なら余韻も与えずに、そのまま続けるのに。由伊はいつだってあたしに優しい。
 落ち着いてきたあたしを抱き寄せるようにして、由伊が心配げな眼差しを落とした。

「この間は大丈夫だったの?、・・・あの人」 

「・・・次の日、ちょっと疲れてそうだったけどね。加減はできたから」

 あたしはうつろに笑う。

 あのひと、とは階堂倭人のことで、彼を殺しはしなかったか。
 由伊が訊きたかったのはそういう事だ。

「・・・彼を好き?」

「・・・かな」

 殺したくなかったから加減できてるのか。それもよくは判らないけれど。
 思うより続いた。最初は消耗品のようなつもりだったのに。

「でも、ひなせを一番わかってるのは・・・僕だよ」

「・・・知ってる。おにいちゃんだもん」


 由伊とあたしは。
 この世界に生み落とされた、たったふたり。
 ひとであって、ひとでは無いもの。
 あたしを救えるのは由伊だけ。
 由伊とひとつになれるのは、あたし。だけ。