「簡易なものだけど、さっき筆と半紙を借りて、厄除けのお札を書いたんだ。頭よりも高い所に飾っておいて。ちっちゃな災いなら、避けれると思うよ」


 懐に仕舞っていた長方形の紙を取り出すと、机の上を滑らせた。詩子は少し複雑そうな顔をしてそれを受け取る。


 「どうしたの?」

 「だって、お札でどうにかなることじゃないでしょう?」

 「まあ、おっちょこちょいが原因なら、足元に気を付けて過ごすしかないかな」


 ほらやっぱり、と詩子は少し残念そうに溜息を吐く。愉快そうに笑った三門さんは立ち上がった。


 「それじゃあ、そろそろお暇しようか。渡辺さん、いろいろ用意してくれたみたいだよ」


 詩子の顔をちらりと見てから立ち上がる。

 玄関まで見送ってくれた詩子と「連絡するね」「うん、私も」そんなやり取りをして、最後に小さく手を振ってから来た道を戻り始めた。