首を傾げながらソファーに戻る。ふう、と息を吐いたその時、ガシャン! と何かが床に落ちるような激しい音と、詩子の短い悲鳴が聞こえた。


 「ちょっと詩子! 何してるの!」


 渡辺さんが声を張りあがる。


 「ごめんなさい、棚から箱落とした!……あっ、ちがうの、えっと何でもないっ」


 叫ぶ声と廊下を走る音が近付いてくる。障子が開くと、詩子が苦笑いで立っていた。


 「ごめん、騒がしくて。スマホ探してたら椅子に小指ぶつけて、ふらついたら棚に腰をぶつけて、アルミの箱が頭に箱が降ってきた」

 「だ、大丈夫……?」

 「何ともないよ! でも最近変なんだよね。これまではそんなにおっちょこちょいじゃなかったんだけど」


 そう言いながら後ろ手で障子を閉めた詩子。「それよりも交換しよ!」と、スマホを弄りながら私の隣へ腰を下ろす。