学校の話や受験の話をして、受験先が同じ高校だと分かると私たちは直ぐに仲良くなった。最初は気恥ずかしくてお互いに敬称を付けていたけれど、十分も経たないうちに「詩子」「麻」と呼ぶようになる。ここへきて初めてできた友達と呼べる存在に、嬉しくて頬が思わず緩む。


 「そうだ、連絡先交換しようよ、スマホ取ってくる!」


 そう言って元気よく客間を飛び出していった詩子。自分のスマートフォンもポケットから取り出して、机の上に置く。

 そしてなんとなくひな人形を見上げた。やっぱりすごいなあ、なんて思いながら近くに歩み寄り、お雛さまの顔をじっと見つめる。

 その瞬間、お雛さまの細い目がぱちりと瞬きをした。


 「え……え?」


 思わずずんと顔を寄せて凝視する。しかしお雛さまは一点を見つめたままで、先ほどと変わらない顔をしている。


 「目の錯覚……?」


 瞬きを我慢して限界まで目を見開きお雛さまの顔を見つめる。しかしいくら待っても何の変化もなかった。