「うたちゃんのお雛さま、立派だね」
「その分出すのがたいへんだよ」
うたちゃんと呼ばれた彼女は苦笑いで肩を竦めた。そしてお茶を淹れてくる、と部屋を出ていく。
「そっか、ひな祭りだもんね。うちも麻ちゃんが来てるんだから、飾れば良かったかな」
「え、自宅にもあるんですか?」
「あるよ。麻ちゃんのお雛さま」
目を丸くしていると、詳しく話を聞かせてくれた。そのお雛さまはひいおばあちゃんから、代々受け継がれているものらしい。お母さんがお嫁に行ったときに持って行かなかったから、ずっと倉庫にあるのだとか。
帰ったら出そうか、と言ってくれた三門さんに素直に頷く。代々受け継がれている雛人形を少し見て見たかった。
その時、障子がすっと開いた湯飲みをふたつ乗せた彼女が入ってくる。
「お母さん、いろいろ持って帰ってもらおうとしてるから、もう少しかかりそう。あとおばあちゃんが三門くんと話したいって」
「分かった。おばあちゃんは部屋?」
「ううん、縁側」
「ありがとう」