「すごい……」


 そう呟いたのは無意識だった。

 苦手だった歴史の問題集を昼ご飯を食べた後に解いてみたが、これまでで一番良い点数だった。

 どれもこれも、昨夜妖たちから“昔話”という名の歴史の授業を受けたおかげだ。葵に連れまわされ、ババやろくろ首たちから聞いた。なんと、ババは織田信長のことも語ってくれて、このひとたちは一体何歳なんだと目を見開いた。

 赤ペンを筆箱に直して回答用紙を掲げる。

 今日の夜、ババたちに見せてあげよう。

 そう心に決めて、少し休憩を取ろうと部屋を出た。


 台所でコップに水を入れていると、三門さんが顔を覗かせた。風呂敷を持っているので、どこかに出かけるらしい。


 「お、麻ちゃん。休憩中?」

 「はい。三門さんはお出かけですか?」

 「うん、お札を届けに行ってくるよ。そうだ、麻ちゃんも一緒に行く? 気持ちの切り替えにもなるんじゃないかな」


 断る理由もなかったので「行きます」とすぐに答えて、自分の部屋にコートとマフラーを取りに行った。