「春からここに住むために必要なの」

 「……は!? 麻、お前ここに住むのか!?」


 目を輝かせた葵が身を乗り出す。近い近いと彼女の肩を押し返し、苦笑いを浮かべる。「高校に合格したらだよ」と付け足した。

 葵はみるみるうちに笑顔になった。


 「コウコウに合格したら、春からここに住むんだな、それは本当なんだな!?」

 「本当だよ。だから勉強しなきゃいけないの」

 「分かった。それじゃあ私が教えてやる! さっさとそこに座れ!」


 私の肩をぐいぐいとおして机の前に座らせた葵。物珍しそうに教科書をぺらぺらとめくっていく。私は苦笑いを浮かべた。


 「葵、気持ちは嬉しいけど遠慮するよ」


 そもそも妖である葵とは常識から違うのに、ひとの勉強を教えれるはずがない。

 傷付けないようにそれをどう説明するか考えていると、