皿の上に合った残りのふたつを平らげた葵は満足すに指を舐める。
「美味かったぞ、麻が作ったのか?」
「三門さんだよ。それで、どうしたの?」
「あっ、そうだよ! 握り飯食いに来たわけじゃないんだった!」
はっと我に返った葵は、途端不機嫌な顔を作って腕を組んだ。
「私は怒ってるんだぞ」
「え、どうして?」
「どうしてって! 麻、お前昨日のうちにここへ来ていたんだろう? 何で知らせなかったんだよっ」
ふん、と鼻息荒くそう言った葵に「あ……」と呟く。
すっかり忘れていた。葵とは何度かの手紙のやり取りで、帰ってきたら一番に知らせるって約束していたんだった。
「妖の便りで知ったんだぞ、悲しかったっ」
「そ、それは謝る、ごめんね。勉強で忙しくて」
「勉強だぁ?」
葵は机の上に広げていた教科書を一瞥して、うげっと顔を顰めた。