それから一週間後、姉が校長室に呼び出された。
 校長室の近くを通った生徒によると姉の悲鳴とか喚き声が聞こえた、という。
 その日の夜に姉は帰って来る事は無く両親はお城に呼び出された。
 使用人達がザワザワしているのを見て私は結構冷静に見ていた。
 その翌日、学園に行くと今度は私が校長室に呼び出された。
 校長室に入ると校長先生ともう一人男性がいた。
「コレット・マージル男爵令嬢ですね?」
「はい、そうですが……」
「私は王立魔術院で調査官をしている『ジャニス・ヘバライト』と申します」
 ヘバライトと言えばこの国では有名な魔導士一族だ。
「実は貴女のお姉さんであるミラル・マージルが魅了持ちである、という匿名の報告がありまして昨日調べさせてもらいました」
「そうですか……」
「結論から言うと彼女は魅了持ちである事が判明しました。現在、ミラルは魔術院に身柄を拘束、ご両親もお城の方に拘束させてもらっています」
 私の読みは当たっていた。
「それで貴女に聞きたいのですが……、もしかして報告をしてくれたのは貴女ですか?」
「……そうです。余りにも姉が周りからチヤホヤされているのを見ておかしいと思ったので私なりに調べてみました」
 私は素直に言った。
「貴女の観察眼は素晴らしいですよ。手紙に書かれていた事はほぼ事実である事は確認しました。今後、ミラルに関わっていた人物は検査を行い魅了の程度を調べないといけません」
「因みに姉の様子は?」
「最初はキョトンとしていましたが魅了持ちと判明して今後の事を説明したらパニック状態になって泣き喚いていましたよ」
「当然だろうな。今までチヤホヤされていたのが当たり前だったのがタブーの力を使っていたのだからな」
 校長先生は溜め息を吐きながら言った。
「それでコレット、これからの事なんだが・・・・・・、多分マージル男爵家は取り潰しになる可能性が高い。そうなると・・・・・・」
「あぁ、大丈夫です。私としては実家とは縁を切りたい、と思っていたので」
 私がそうキッパリと宣言した。
「貴族の名誉が無くなるのだぞ? それでも良いのか?」
「心配してくださってありがとうございます。ですが、私は一人でなんでも出来る自信があります」
 これは本当の話で使用人達は姉にべったりで私が住む離れには近づかなかった。
 だから、ある程度の事を一人で出来る。
 それに、貴族社会には何にも未練が無い。
「私は平民になる覚悟はできております」
 そう言いきった。
「……君は強いね。マージル男爵も君の方を可愛がってあげれば違う未来があっただろうにね、残念だよ」
 その後も色々話して私は校長室を後にした。
 教室に戻るとクラスメイト達が私に寄って来た。
 そこで私はこう宣言した。
「皆様、我がマージル家は近いうちにお取り潰しになる事になりました。私は本日をもって退学する事になりました。今までお世話になりました」
 私はそう言ってカバンに教科書を入れて教室を出て行った。