幽世で生きていくと決意したら、ふと力が抜けた。

宿の外の世界をほとんど知らないので、もしかしたら黒爛のような恐ろしいあやかしが潜んでいるかもしれない。
けれども、私には白蓮さんがいてくれる。


それに鬼童丸さんや勘介くん、そして和花さんとの生活が楽しくて笑顔でいられることが増えた。

雪那さんににらまれるのは少々理不尽だけど……。
彼女は鬼童丸さんが好きすぎるだけで、決して悪いあやかしではないことはわかっている。


私と料理を担当している和花さんは、みるみるその腕を上げていく。

しかし、あっちもこっちもという並行作業が苦手なようで、お湯が沸くのをじっと待っているだけだったりして面白い。

「彩葉は器用なんだ」と白蓮さんが盛んに言うが、きっと和花さんのこういうところを知っているからだろう。



今日の夕飯は枝豆ご飯にしてみた。
あとから豆を混ぜるのではなく一緒に炊き込むのがコツだ。