「なら、それを俺にも食わせろ」
「縁様! またそのような口の()き方を……」
「食わせて下さい。これでいいだろ?」

縁が慌てて言い直す。

「ええ。では、わたくしも馳走(ちそう)になるといたしましょう」

「はぁ」と未だに理解不能な現状に、結は微妙な返事をしながらも「では、茶寮(さりょう)の方へ」と客人を案内する。


 *


「こちらが恋神茶寮でございますか。木々がふんだんに使われていて、とても居心地が良さそうでございますね」

カイは煌めく瞳で黒光りした剥き出しの太い(はり)を見つめ、恍惚(こうこつ)とした溜息を吐いた。
どうやら、梟としての(さが)が、年季の入ったこの古い建物をお気に入りにしたようだ。だが――。

「狭い! 茶室でももう少し広いぞ」

室内を見回した縁は舌打ちをする。

「縁様にピッタリの場所では?」
「お言葉ですが……」客人たちの言葉に(ごう)を煮やした結が口を開く。
「我が城に文句があるならお引き取り下さい」

いくら大神様の三男であろうと、その神使であろうと、おばば様と(まも)ってきた大切な場所を(けな)されるのには我慢ならなかった。

「言葉が足りず誤解させてしまったようで、申し訳ございません。馬鹿にしたのではなく、縁様のねじ曲がった心根(こころね)を治すには、このような温かな場所がピッタリだと言いたかったのです」

カイが申し訳なさげに項垂(うなだ)れると、結はコクンと頷き、縁の方に視線を向けた。

「貴方は……」
「貴方ではない。縁だ。縁師匠(ししょう)、または縁様と呼べ」

あくまでも偉そうな姿勢を崩そうとしない、そんな彼に結は呆れる。