結の説明に、カイは、ほほう、と感嘆の息を吐き、「結様は土地の食材を使っての料理もお上手ですね」と微笑みを浮かべた。

「なのに、俺がリクエストした料理はどうして残念な形で出てくるんだ?」
「確かに、味はいいけどこの卵焼きは……ノーコメントしたいほど悲しいできだね」

因も美食家なのだろう。縁に同意する。すると縁が「だろ?」と頷く。

「へぇ、意外。縁様と因様って、本当は仲良しなんだ?」

その様子にハクがそう言うと、縁はハッとして、「誰がこんな奴と仲良しだって?」と目くじらを立て、そっぽを向くと取り皿に赤こんにゃくと牛肉を山盛りにして無言で食べ始めた。

「美少年の言うとおり、昔は仲が良かったんだよね。でも、ご覧のとおり、今は親の敵みたいだろ?」
「そんな風に言うってことは、因様は縁様に敵意を持っていないということ?」

ハクの無邪気さに因も構えることなく答える。

「俺はむしろ友好的? 古き友情を途絶えることなく続けたいと思っているよ」
「何が友情だ! 裏切りやがって!」
「縁様、お言葉が乱暴でございます」

カイがたしなめようと縁に声をかけるが、「ご馳走様」と縁は手を合わせると、「因の祈祷は行わないからな」と言い残してその場を立ち去ってしまった。

「因様、本日こちらにおいでになったのは、本当にご祈祷をされるためだったのですか?」

縁の姿が見えなくなると、カイは溜息を零して因に尋ねる。

「カイってマジで優秀な神使だよね」
因は新たなおむすびに手を伸ばし、ニッと笑った。

「ここに縁が来ているって聞いたから、陣中見舞い? そんな感じ」
そう言いながら因が手に取ったのは赤飯むすびだった。