「――今ストップさせてしまったら……それこそ後悔するだろうな」
梶の言葉に結はニッコリ微笑む。

「分かった! 玉砕覚悟で告るよ。巫女様、見守っていてくれ」
そう言って梶はもう一個の赤飯むすびに齧り付いた。

「今度は俺が」

その味をしっかり覚えるように梶は咀嚼を繰り返して、「小町ちゃんに向かう!」と宣言した。


 *


「帰れ!」
「今日、来いって言ったのはそっち!」

梶の件はひとまず落ち着いたが、もう一つ問題が残っていた。

「俺は言っていない!」
「でも、カイは縁の神使。一心同体も同じだろう?」
「一心同体? 気色の悪いことを言うな!」

さっきからずっとこの調子だ。

「イン……じゃなくて因様も縁様もおむすび食べないの?」

結とハクがカイから『因様は〝起こり〟を司る神です』と聞いたのは、梶が帰った後のことだった。

『ご祈祷云々は後付けの理由でしょう』と言うカイに、『だったら、縁様同様、因様にもおむすびをご馳走致します』と結は提案した。

だが、昼少し過ぎにやってきた因を縁は追い返そうとする。

「あーっ、ハク、俺に断りもなく一人で食べるな!」
「あっ、俺もその揚げ入りおむすび食べたい」
「因、お前に食べさせるおむすびなどない!」

どうせなら琵琶湖を見ながら、と浜辺でピクニックテーブルを囲むことにしたのだが――こんな調子で、いつも以上に賑やかな食事風景になった。

「で、昨日の勘違い男、どうなったの?」

縁の阻止をもろともせず、因は稲荷おむすびを手にすると、ホクホク顔で頬張りながら結に尋ねた。