だが、恋神である結はその末路を知っていた。
『歪な恋心は己を蝕み、しだいに周りをも浸食して地獄に陥れます』
梶の選択を聞き入れれば、遅かれ早かれおばば様の言葉どおりの行く末となるだろう。インをライバルだと思って殴り掛かったのがそのいい例だ。
「突き進む……」
梶は苦渋に満ちた表情で、「玉砕覚悟で進めというのか?」と問うた。
「ええ、そうです。宙ぶらりんとなった恋心は燻ったまま心に居座ります。それは徐々に焼け焦げを作り、ジクジクと苦痛を与え続けます。貴方の心から小町さんがいなくなるまで」
結の言いたいことが分かったのだろう、梶は項垂れたまま、「進むしかないのか……」と呟いた。
「梶さん、お赤飯はハレの日――吉事に食べられることが多いのはご存じですよね? 小豆は邪気を祓うと昔から云われていますが、遠い昔、日本では慶事に赤米を食べる風習があったそうですね」
「ああ、小豆でもち米を赤く染めて食べるのは、その名残だということだ」
梶もやっぱり知っていたようだ。
「なら、小町さんの気持ちが分かるのでは?」
「小町ちゃんの気持ち?」
「半年間、毎朝、朝食にお赤飯を作って出してくれた小町さんの気持ちです」
梶は怪訝な顔で「腹持ちがいいからだろう?」と尋ね返した。
それだけの理由ではないが、近年では非常食として、レトルトパックの赤飯や缶詰の赤飯も売られていて、災害時以外でも――喩えばキャンプの食料としても活用されているそうだ。
『歪な恋心は己を蝕み、しだいに周りをも浸食して地獄に陥れます』
梶の選択を聞き入れれば、遅かれ早かれおばば様の言葉どおりの行く末となるだろう。インをライバルだと思って殴り掛かったのがそのいい例だ。
「突き進む……」
梶は苦渋に満ちた表情で、「玉砕覚悟で進めというのか?」と問うた。
「ええ、そうです。宙ぶらりんとなった恋心は燻ったまま心に居座ります。それは徐々に焼け焦げを作り、ジクジクと苦痛を与え続けます。貴方の心から小町さんがいなくなるまで」
結の言いたいことが分かったのだろう、梶は項垂れたまま、「進むしかないのか……」と呟いた。
「梶さん、お赤飯はハレの日――吉事に食べられることが多いのはご存じですよね? 小豆は邪気を祓うと昔から云われていますが、遠い昔、日本では慶事に赤米を食べる風習があったそうですね」
「ああ、小豆でもち米を赤く染めて食べるのは、その名残だということだ」
梶もやっぱり知っていたようだ。
「なら、小町さんの気持ちが分かるのでは?」
「小町ちゃんの気持ち?」
「半年間、毎朝、朝食にお赤飯を作って出してくれた小町さんの気持ちです」
梶は怪訝な顔で「腹持ちがいいからだろう?」と尋ね返した。
それだけの理由ではないが、近年では非常食として、レトルトパックの赤飯や缶詰の赤飯も売られていて、災害時以外でも――喩えばキャンプの食料としても活用されているそうだ。