その後、断っても断っても、梶から賄賂のように季節の美味が届くようになった。牛乳と小豆はつい最近送られてきたばかりの品だ。
当人は『神社への奉納品だ』と言っているが、その言葉を何となく素直に受け取れない結だった。
「でも、今回ばかりは手元に梶さん家の品があって良かった」
ふふふ、と笑みを浮かべると結は早速おむすびの準備に取りかかった。
*
ピッタリ四時に戻ってきた梶が席に着くと、結は準備しておいたおむすびを梶の前に置いた。
「――赤飯むすび」
「ええ、どうぞお召し上がり下さい」
小豆を身近に感じている梶にとっては珍しくもないおむすびだろう。
だが一口食べると、梶は目を大きく見開き、不思議そうに首を傾げた。
「どこかで食べたことがあるような……」
さらにもう一口食べ、あっ、と声を上げた。
「これは円屋の赤飯だ!」
「流石ですね、良くお分かりになりましたね」
「当然だろう。どれだけこれを食ったと思っているんだ」
「さぁ、存じ上げません」と結が答えると、梶は「半年間ずっとだ」と言いながら笑った。
「半年間とは、小町さんが支援に赴かれていた期間ですね?」
「ああ、小町ちゃんは毎朝、蒸し器で赤飯を作ってくれた」
それも薪で、だそうだ。
「しばらく電気が通じていなかったからな」
梶は赤飯むすびを一口頬張るたびに、手に残るおむすびに目を遣り、懐かしそうにそれを見つめ――ひとつ目を食べ終わった途端、いきなり頭を下げた。
「すまない!」
「梶さん、どうしたんですか?」
結の穏やかな声が問いかける。
「俺は……嫉妬のあまりとんでもないことをしてしまった」
当人は『神社への奉納品だ』と言っているが、その言葉を何となく素直に受け取れない結だった。
「でも、今回ばかりは手元に梶さん家の品があって良かった」
ふふふ、と笑みを浮かべると結は早速おむすびの準備に取りかかった。
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ピッタリ四時に戻ってきた梶が席に着くと、結は準備しておいたおむすびを梶の前に置いた。
「――赤飯むすび」
「ええ、どうぞお召し上がり下さい」
小豆を身近に感じている梶にとっては珍しくもないおむすびだろう。
だが一口食べると、梶は目を大きく見開き、不思議そうに首を傾げた。
「どこかで食べたことがあるような……」
さらにもう一口食べ、あっ、と声を上げた。
「これは円屋の赤飯だ!」
「流石ですね、良くお分かりになりましたね」
「当然だろう。どれだけこれを食ったと思っているんだ」
「さぁ、存じ上げません」と結が答えると、梶は「半年間ずっとだ」と言いながら笑った。
「半年間とは、小町さんが支援に赴かれていた期間ですね?」
「ああ、小町ちゃんは毎朝、蒸し器で赤飯を作ってくれた」
それも薪で、だそうだ。
「しばらく電気が通じていなかったからな」
梶は赤飯むすびを一口頬張るたびに、手に残るおむすびに目を遣り、懐かしそうにそれを見つめ――ひとつ目を食べ終わった途端、いきなり頭を下げた。
「すまない!」
「梶さん、どうしたんですか?」
結の穏やかな声が問いかける。
「俺は……嫉妬のあまりとんでもないことをしてしまった」



