「私は恋神神社の巫女です」
ただし、相手が誰だか分からないので人間界用の自己紹介をすると――。

「お前か、恋神神社の恋神見習いって奴は?」
驚いたことに、偉そうな彼はそう尋ね返した。

「まだチビじゃないか」
チッと舌打ちをすると彼も名乗った。

「まぁいい。俺は大神の三男、(えにし)だ」
「――貴方……神様なの?」
「縁を(つかさど)る神だ」

やんちゃっぽい偉そうなこんな人が? 驚き呆れる結に、縁は天を指差しながらこれまた偉そうに言った。

「あそこから来たんだ、当然だろう? 今日からお前の師匠は俺だ!」
「はい?」

突然の『師匠』発言に、全く意味が分からないといったように結が首を傾げると、「ったく!」と縁は苦々しい顔で毒づき始めた。

「お前、恋神としても半人前以下なのに、おつむの中身も半分以下みたいだな」
「縁様、お口が過ぎます」

失礼極まりない縁の言葉に、頭上から降ってきた低音の声が(かぶ)さる。その途端、「うわっ、止めろ!」と縁が悲鳴を上げた。

急降下してきた白梟(しろふくろう)が、縁の頭を激しく突っつき始めたからだ。

「カイ、やめろ、暴力反対!」
「なら、今すぐ結様に謝罪を」
「うわっ、痛い! ごめん」
「ということで」

地面に舞い降りた白梟が、瞬時にキリリとした男性に変化(へんげ)する。その姿はまるで――執事? だった。

「結様、本当に申し訳ございませんでした」

男性が深々と(こうべ)()れる。人間年齢で言えば二十七、八といったところだろうか? 黒髪にメタルフレームの眼鏡がクールな印象を与えているが、物腰は柔らかだった。