その間、結は口をポカンと開け、絵に描いたような〝間抜け(づら)〟で彼らの様子を眺めていた。

「じゃぁ、問題ないじゃない? 想う相手は別なんだから」

ハクがもっともなことを言う。そこで結はハッと現実に戻った。
そして、「ごめんなさい!」と勢い良く頭を下げ、「勘違いをしたのは私です」と事情を説明した。

「あー? お前がこいつに知らせたぁ?」
〝白眼視〟のお手本のような眼で縁が結を見る。

「恋……いや、巫女とも有ろう者が、中立的な立場を越えて誰かに肩入れするとは……お前、最低の恋……いや、巫女だな」
「ごもっともでございます。すみません」

言葉もなく項垂れる結を庇うように、「いや俺が悪いんだ」と言うが早いか梶が結の前に立つ。

「男らしく告白しないから……巫女様はそんな俺の相談相手だったんだ」
「結様ぁ! おばば様にキツク言われていたじゃないですか。個人的にそういうことをするなって」

ハクが呆れ眼で結を見る。

「だって……小町さんは私のことをお友達って言ってくれたから、幸せになって欲しいなって思って……」
「本当にお前って甘ちゃんだな。己の感情を持ち出すからこうなるんだ」

それは縁の言う『ドライが一番』という意味だろうかと結が思っていると――。
「巫女様だって人間だ。感情に左右されて何が悪い!」
結が恋神と知らない梶が、縁に向かって逆ギレのように怒鳴った。

「ああ、もう、ややっこしい! お前、今日は帰れ」
溜息と共に縁の顎が出口を指す。

「縁様! それはちょっと宮司としてあるまじき言動ではありませんか?」
結の(いまし)めに縁は「はぁ?」と問い直す。