「おい、横から話に交わるな! 俺が先だ」
「先も後も無い。ここの最高責任者である宮司は俺だ。よって現状について俺が分かるように説明しろ」

腕を組んでふんぞり返る縁を見ながら、「偉そうだけど……」とハクが結に耳打ちする。

「一応、責任者という思いはあるんだ」

結も縁の態度を意外に思った。だが、良く見ると縁が〝因様〟と呼ばれるインを意識しているのが分かった。

しかし、当の本人であるインは、問題の真っ只中にいるにもかかわらず、飄々(ひょうひょう)とした様でカウンターにもたれて成り行きを見守っていた。

「俺はそいつよりも先にご祈祷を受けようと思ったんだ。だって、そいつの相手って小町ちゃんなんだろう?」

梶が不躾(ぶしつけ)にもインを指差し睨み付ける。
これには流石のインも驚いたようだ。ビシッと背筋を伸ばすと、「勘違いだ」と叫んだ。

「相手は、巫女様!」

そして、長い腕を伸ばして結を指差した。だが、どうしたことか、今度は縁がインに殴り掛かった。

その様子に、驚いたハクが「えっ? 縁様って結様が好きだったの?」とトンチンカンなコメントを叫ぶと、「はぁぁぁ?」と呆れた様子で縁の動きがやっと止まった。

やれやれ、と(かぶり)を振り、「少しお話を整理致しましょう」とカイが間に立つ。

「まず、梶様のお相手は小町様、で間違いはございませんね?」

そうだよ、と梶がぶっきらぼうに返事をする。だが、その顔は朱に染まっていた。

「次に因様のお相手は小町様ではなく、結様ということですね?」
「うん、そう」

「お前!」また飛び掛かろうとする縁をカイが(いさ)める。
「縁様、最高責任者ならそのような振る舞いを!」

くそっ、と縁はそっぽを向くと口を一文字に結んだ。