「確かにそうですけど……」と眉を八の字にしながら、それでも「できない相談をお断りするのも礼儀です」と言い返した。

「結ちゃんって……見た目と違って男前さんだね」
「うん。結様は一見かわいい風だけど、なかなかどうして芯は強固だよ」

ハクの言葉にインはニンマリと笑みを浮かべて、「いいことを思い付いた」と指を鳴らした。

「俺、ご祈祷を受ける。それで授かるんだよね? おむすび」

突然どうしたのだろう?
結が訝しげにインを見上げると、インは「よろしく」と結を見下(みお)ろし、我慢できない、というように突然哄笑(こうしょう)した。

「何がそんなに可笑しいんですか?」
「そうだよ。結様の顔を見て笑うなんて、失礼だよ」

ハクが怒りの声を上げる横で、結は、さっき食べたクリームでも付いているのかと掌で口元を拭う。

「あっ、ごめん。顔を見て笑ったわけじゃないんだ」
「それはいいですけど、おむすびを食べたいがためにご祈祷されるのでしたら、お断りします」

まただ、とインは拗ねたように呟き、フルフルと首を横に振った。

「おむすびを食べたいっていう欲求もだけど……」
「あっ、実は好きな人がいるんだ?」
「そうそう! そういうこと」
「だったら隠さず最初からそう言えばいいのに」

責めるように言いながら、ハクは、あっ、と思い直したように、「その顔で片想いとか恥ずかしいよね」と慰めの言葉を口にする。

結も、インが片想いなんて絶対に無いと思っていたが、『絶対なんてないわ。人の心はままならないものよ』とおばば様が言っていたのを思い出す。