「インだけ狡い。フン、女ったらし」頬を膨らませ、「僕も甘い物、大好きなのに」と、ハクがブツブツ文句を言う。だが、それもパフェがくるまでだった。

「うわぁ、今年の特性マロンパフェ、超豪華!」

テーブルに置かれたパフェを見た途端、ハクの機嫌は急浮上する。

「円屋の餡子が最高に美味しいって聞いてきたんだけど、本当、すっごく美味しい!」
「でしょう! ここの餡子を食べたら他の店のは食べられないでしょう?」

ハクが問うとインは首振り人形のように何度も頷きながら、「言えてる!」と同意する。そして、パフェとあんころ餅を交互に食べながら、(ほころ)んだ花のように美しい笑みを浮かべた。

その様子を目前に見ながら、私も甘い物好きだけど……と、結は胸に手を置き、ちょっと胸焼けを覚えていた。


 *


「最高にハッピーでした」
「うん! 美味しい物を食べると幸せになるね。結様のお揚げさん入りおむすびもだよ」

そう思うのはハクだけだよ、と結は心の中で否定する。

「おお! そう言えば、恋神神社のおむすびは恋の成就を授けるアイテムだったね」

(あで)やかに笑いながら「俺もそれ食べたいなぁ」と、()びるようにインが結を見る。
だが、結は公私混同しない主義だった。だから、「それはできません」と即座に断った。

「結ちゃんって、俺が嫌い? ずっと断られてばかりいるんだけど……」
「それはインさんが無茶ばかり仰るからです」
「無茶? 何が? 親切にされたらお礼をするのが礼儀だし、美味しい物があると聞けば食べたいと思う。それって普通のことだろ?」