「不思議ですか?」
はい、と答える彼女に結は微笑んだ。
「御利益として授けるおむすびは、祈願者の心の声を五感で感じ、作るからです」
おばば様の受け売りだが、結にもその言葉の意味が少し分かってきた。
「五感で感じる……」
「ええ、真に願うことは一つ。それを頭で考えてしまうと思考が心を濁らせてしまいます」
「真に願うことは一つ……」神崎百合香の瞳からまたポロリと涙が一粒零れ落ちた。
「神崎さん。貴女が真に願うことは何ですか?」
「私は……私は……彼とずっと一緒に……いたい」
「彼とは?」
「友介……佐伯友介さんです」
その名を言い、彼女は堰を切ったように泣き出した。
――澄んでいく。結はその涙を見つめつつ、彼女の心を覆っていた悪しき思いが晴れていくのを感じた。
「では、貴女の本当の願いは佐伯友介さんと結婚したい、でいいですか?」
モニターを見ていた縁が、結婚したいと言ったか、と尋ねると、カイが、五感で感じたのでしょう、と答えた。
「けっ……結婚……」
あれほど溢れ流れていた涙がピタリと止まり、泣き濡れた目が結を見る。
「私の思い違いでしょうか?」
結が尋ねると、彼女はゆっくり頭を振り、「違いません」とハッキリ答えた。
だが、そのすぐ後で、「でも……」と顔を曇らせる。
「父が彼との結婚を反対すると思います」
「ということは、赤城俊哉を選んだのは、理想の男性というよりも、お父様が反対されないからという理由で?」
はい、と答える彼女に結は微笑んだ。
「御利益として授けるおむすびは、祈願者の心の声を五感で感じ、作るからです」
おばば様の受け売りだが、結にもその言葉の意味が少し分かってきた。
「五感で感じる……」
「ええ、真に願うことは一つ。それを頭で考えてしまうと思考が心を濁らせてしまいます」
「真に願うことは一つ……」神崎百合香の瞳からまたポロリと涙が一粒零れ落ちた。
「神崎さん。貴女が真に願うことは何ですか?」
「私は……私は……彼とずっと一緒に……いたい」
「彼とは?」
「友介……佐伯友介さんです」
その名を言い、彼女は堰を切ったように泣き出した。
――澄んでいく。結はその涙を見つめつつ、彼女の心を覆っていた悪しき思いが晴れていくのを感じた。
「では、貴女の本当の願いは佐伯友介さんと結婚したい、でいいですか?」
モニターを見ていた縁が、結婚したいと言ったか、と尋ねると、カイが、五感で感じたのでしょう、と答えた。
「けっ……結婚……」
あれほど溢れ流れていた涙がピタリと止まり、泣き濡れた目が結を見る。
「私の思い違いでしょうか?」
結が尋ねると、彼女はゆっくり頭を振り、「違いません」とハッキリ答えた。
だが、そのすぐ後で、「でも……」と顔を曇らせる。
「父が彼との結婚を反対すると思います」
「ということは、赤城俊哉を選んだのは、理想の男性というよりも、お父様が反対されないからという理由で?」