「あっ、この金平ごぼうも凄く美味しい!」
「ありがとうございます」

先程と同じように、お礼を言いながら彼女は照れているが……。あれっ? だが、一箇所、先程までと違うところを結は見つけた。瞳に(うれ)いが浮かんでいるのだ。

――もしかしたら、この〝金平ごぼう〟がキー?

「昨日の夕飯に、私も金平を作ったんです」
「あっ、(かぶ)っちゃいました?」

彼女が申し訳なさそうな顔をする。

「いいえ。私の金平こそ、(もど)きだったので全然です」
「――どういう意味でしょう?」

困惑げに彼女が尋ねる。

「そうですよね。分かりませんよね」

そう言いながら結はその時の様子を語って聞かせた。

「――ですから、宮司様が説明されたように作ったんですよ。なのに、牛蒡(ごぼう)の味も風味もイマイチだし食感もちょっと……。宮司様なんかボロクソに言うんですよ私のこと」

愚痴を交えて話し終えると、小首を傾げて彼女が質問する。

「昨日の金平はありますか?」

残っている、と結が答えると、「それを食べさせて下さい」と彼女は言った。

「いいですけど、本当に不味(まず)いですよ」

情けない顔で返事をして、結が冷蔵庫からそれを持ってくると、彼女はそれをジッと眺め、口にした。

「分かりました。切り方とあく抜きの方法が少し不味かったようです」

彼女はそう言って、丁寧に欠点を述べた。

「あく抜きのし過ぎと、皮の取り過ぎですか……そう言えば、どちらも親の敵のようにしていました」

彼女曰く。牛蒡を洗う場合、金だわしなどでゴシゴシと洗うのはNGだそうだ。