「カイ……縁様は結様を苛めているの？」

結の様子に胸が痛むのだろう、ハクが顔を歪めながら訊く。

「そうではなさそうですね……」

カイがニヤリと笑う。

「縁様も成長されている、ということです」

キョトンとするハクを横目に、「流石、大神様でございます」とカイはほくそ笑む。


　＊


「美味しい！」

しかし、いくら文句を言ったとしても、〝明日〟という日は必ずやって来る。約束どおり、次の日彼女はやって来た。

「神崎さんの雰囲気から洋食のお弁当を想像していたんですが、〝おせち料理〟っぽいですね」
「巫女様が何となく和食好みのような感じがして……」

彼女の方は、巫女スタイルの結からそう思ったようだ。

洋食も好きなんだけどなぁ、と結は思ったが、敢えて口に出さなかった。それよりも、お互いが外面だけでその人の好みを決め付けていたことに苦笑いが浮かぶ。

おばば様に言われていたのに……。

『第一印象は非常に大切です。ですが、それに固執すると失敗を招く恐れがあります。それを回避するにはその人を良く見て、できるだけ多く情報を集めることです。それには会話が一番の手ですよ』

結の脳裏にその言葉が蘇り、改めて神崎百合香を良く知ろうと気持ちを引き締めるが、次の瞬間、「えっ、何これ？」と叫んでいた。

「これ、鶏肉の八幡巻きじゃない……ですよね？」
「それは擬(もど)きです。芯となる野菜を、味を付けたおからとお揚げさんで巻いているんです」

「凄い！」結は本気で心から感心した。

「褒めて下さって嬉しいです。私、こういう創作料理を作るのが好きなんです」
「チャレンジャーなんですね？　意外です」

本当に見掛けと違う。