『直感というものは案外当たるものです。大切になさい』
おばば様の言葉に従えば、この警報は彼女の願いを叶えるべきではない、ということだ。

「それらが貴女の条件だということですね?」

そう()きながら、どうして縁が彼女の〝願い〟を選んだのか結は理解できずにいた。

「はい、そうです。本当は恋神様にお願いに来なくても、彼と結婚できるんですけど……確実にそうできるようにお願いに来ました」

しかし、そう思いながらも、おかしい、と結は心密かに首を捻る。
彼女の口調に恋する女性が(かも)し出す〝ルンルン感〟が全く見受けられないからだ。〝結婚〟という(きら)めく言葉を口にしているにもかかわらずに。

「ここに来なくても結婚できるとは、どういう意味ですか?」
「文字通りです。父が彼を口説き落としてくれるからです。お気に入りですから」

なるほど、と結は納得する。娘から言い出したお見合いだが、彼女から申し出なくても、いずれ父親が言い出した、ということだろう。

それにしても……彼女は一度も彼を『好き』と言っていない。それに気付いた結は、本当に赤城俊哉と結婚したいのだろうかと思う。

こんな曖昧(あいまい)な情報ではおむすびが握れない。結はどうしたものかと考え、ゆっくりと立ち上がった。

「お話に夢中になってしまって、お茶も出さずにすみません。お飲み物は何がいいですか?」
「じゃあ、紅茶を……できればミルクティーをお願いします」

やはり緊張していたようだ。そう尋ねると、彼女はすぐにそう返事をした。よほど喉が渇いているのだろう。

「了解しました。少々、お待ち下さい」

結はロスタイムができ、少し猶予(ゆうよ)ができたとホッとする。