「おむすびとお味噌汁以外で、結様が上手に作れる数少ない逸品(いっぴん)のおかずなんだ」
「上手にできるようになったのは、ハクが何度も作らせたからです」
「だって、大好きなんだもん」

おむすび同様、お宝茶巾の中身もいろいろで、シークレットなのだとハクが説明する。

「何が入っているか、当てっこするのが楽しいんだ」
「遊び心のある食卓ですかぁ、それはいいですね」
「うん。それにすっごく美味しいんだよ」
「お手間入りでしょう?」

カイの質問に、いいえ、と結が首を横に振る。

「お揚げさんの中に材料を詰めて煮るだけなので、全然です」

それでも初めの頃は「中身が生煮えだったり、煮すぎだったり、失敗続きだったんだよ」と、ハクが無邪気に真相をバラす。

「結様の努力で美味しいお宝茶巾ができ上がった、ということですね。それは食べるのが楽しみです」
「ほう、だったら卵焼きも、早くその努力の成果とやらを見せて欲しいものだ」

突然、縁の声が聞こえ、「はーっ、腹が減った」と席に着く。

「縁様、拝殿で何をされてたんですか?」

ハクの質問にフンと鼻息で答えると、縁は「汁物はまだか?」とテーブルを眺め催促する。

「あっ、ただいま」

結はキッチンに舞い戻ると、味噌汁をよそい各自の前に置いていく。

「これはシジミですね?」
「はい。魚屋さんによると、今日のは島根産だそうです」
「どうされたのですが? 少し残念そうですが……」

カイが問うと結は、「せっかくなので琵琶湖で採れたしじみを、と思ったのですが」と苦笑いを浮かべる。