その後は、信じる者は救われる、と思っている者だけが参拝しているようで、ネットの口コミ欄も穏やかなコメントばかりとなった。


――だが、その噂……実は本当のことだった。

噂の二人は正真正銘、恋神神社の〝恋神〟だった。
二人の恋神は人々の願いを聞き、恋を結ぶとされる〝おむすび〟を握り、それを授け、願いを成就させてきたのだ。

巫女である若い恋神は、そんな平和で穏やかな毎日に満足していた。
しかし、その出来事から数日経ったある日、その平穏な日々を脅かす危機的事態が起こった。

恋神神社の宮司である〝おばば様〟が、大神様に召喚(しょうかん)されてしまったのだ。

三日経ってもおばば様は戻らず、人々の〝願い〟は昇華(しょうか)されずに()まっていった。なぜなら、残された若い恋神は半人前以下の見習恋神だったからだ。

「どうしよう! このままでは願いが腐り、恋神神社が(すた)れてしまう」

恋神神社を維持するには、良質のパワーが必要だった。
良質のパワーとは、願いが叶った(成功)時に、祈願者から発せられる良質(幸福)のエネルギーのこと――と、若い恋神〝(むすび)〟は理解していた。

神社を包むその良質なパワーを失ったら、恋神神社は消滅。いわゆる、神社を閉鎖しなくてはならないのだ。

しかし、それだけではない。祈願者にも――いや、願いにかかわる大勢の人々にも、多大なる悪影響が及ぼされることを結は知っていた。

「ハク、どうしたらいい?」

〝ハク〟というのは、結を手助けする神使(しんし)白狐(びゃっこ)のことだが、白狐といってもまだ子狐。彼もまた頭を抱えるだけだった。

そんなハクを横目に、「本当にどうしよう……」と、結はおばば様がいるであろう、抜けるような青い空を見上げ、深い溜息を零した。