――まるで鏡の中の私だ。彼女の発言が自分のことのように思え、結は胸が痛んだ。

「こんな根暗で、不細工な女なんて……苛めの対象になっても、恥ずかしくて好きにはなってもらえませんよね」

乾いた笑みを浮かべた彼女は、「やっぱり……キャンセル」します、と言いかけたが、それを結は(さえぎ)った。

「ちょっと失礼します」

そう言って、テーブル越しに彼女の方へと身を大きく傾けると、彼女の眼鏡を取り、厚く被さった前髪を横に流した。

「えっ、ちょっと……」

結の突然の行動に、佐々木聖美は目を丸くしてグッと背もたれの方に身を(のが)す。

「思った通り……」彼女を見遣り、結は、うんうん、と一人悦に入り、眼鏡を返した。

「では、赤城俊哉のお話をもう少し詳しくお教え下さい」

そして、戸惑う彼女を無視して今度は相手の詳細を尋ね始めた。

「あの……ですから、もうキャンセルを……」
「それはできません!」

語気を強めた結が大きく(かぶり)を振る。

「それは不敬罪(ふけいざい)の中でも最も大罪と云われているものです。貴女は地獄に落ちたいのですか?」

今、結が言ったことは大嘘だ。これも用意周到のカイが用意した答えの一つだった。

「大罪……地獄……」

しかし、彼女は顔色の悪い顔をさらに青ざめさせ、「これ以上不幸になるのは嫌です」と呟いた。

「だったら、チャレンジしてみませんか? ほら、言うじゃありませんか? 『踊る阿呆(あほう)に見る阿呆、同じ阿呆(あほ)なら踊らにゃ損々』あれですよ」

どんな喩えだ、と隠しカメラでその様子を見ていた縁、カイ、ハクが思い思いにツッコム。だが、彼女は笑った。