何だかんだ、とやかく言っても縁はやっぱり神だった。おばば様に負けず劣らずの祈祷ぶりで、(とどこう)りなく終了してしまった。

「では、御利益を授ける。そこの巫女に続き恋神茶寮に参れ」

おばば様の謙虚さとはほど遠い、縁の傍若無人な態度にハラハラし通しだったので、ひと時、その後のことを忘れていた結だったが、この一言でまたしても緊張の波が襲ってきた。

「あのぉ……」

恋神茶寮に向かう道すがら、声が掛けられる。
何を言われるのだろう、とドキドキしながらゆっくり振り返った結に、「噂と違いますね」と佐々木聖美は言った。

「噂と……違う……?」

結の脳内にクエスチョンマークが飛び交う。

「はい。恋神神社には、おばあちゃん宮司様とかわいらしい巫女さんがいらっしゃると聞いていたのですが、どう見てもあのお方、おばあちゃん宮司様じゃないですよね」

「だから……緊張しました」と彼女が苦笑いを浮かべた。
「ああ」と結はようやく理解する。

ツンツン髪を烏帽子(えぼし)に隠した縁は、ツーランクほどイケメン度が増していた。イケメンの神様は人間のイケメンとは比べものにならないほどイケメンだ。だから緊張を()いられても当然だった。

「それは申し訳ございませんでした」

結は取り繕った笑みを浮かべ、用意してあった理由を述べた。

「おばあちゃん宮司はただいま出雲(いづも)に出掛けております。故に、本日は系列の神社から代理をお呼び致しました」

『想定内の質問に対して幾つか理由を用意しておきました』

昨夜、そう言ってカイから一枚の用紙を手渡された。突発的な出来事にテンパらないようにだそうだ。その中の一つが今の答えだった。

「そうだったんですね。恋神神社には女性しかいないと思っていたので……」

その顔が少し(かげ)る。

「あのぉ……男性だと不味(まず)かったですか?」

その顔に違和感を覚えて結が質問すると、佐々木聖美は無言で下を向いてしまった。