「でも、だからこそ、最後までやり遂げた方々は真に幸せになられるのだと思います」

恋神神社に(みなぎ)っていた、良質のパワーがその証拠だった。

「じゃあ、明日からお前がおばば様の代わりにそれをやれ」
「はぁ?」
「半人前の恋神だが、お前のおむすびはおばば様のお墨付きを貰っているんだろ? だったら、今の流れならお前にもできるだろう? やれ」

やれ、と簡単に言うが……と結は細く長い溜息を吐いた。

「さっき申しましたよね? 宮司ではないので私はご祈祷ができません。それに、おむすびは〝祈願者の願いに合わせて〟握りますと。それがとても奥深く、難しいのです。だから私には無理です」

万が一、願いと違うおむすびを握ってしまったら……そう思うと怖くて握れない。

「願いと違うものを握ったらどうなるんだ?」
「当然、当事者は(おろ)か、関係者全員を不幸にしてしまいます」
「ふーん」と縁が鼻で返事をする。
「お前はそれが怖くて、ずっと半人前でいるということか?」

情けない奴――縁が心の中でそう思っていることぐらい結にも分かった。しかし、何と思われようと、人生を左右するおむすびを人に授ける自信が結にはなかった。

「何とか言えよ」
「縁様……それぐらいに……」
「カイは女や子供には甘いな」
「フェミニストでございますから」

けっ、と(あざけ)るように口を鳴らし、「神使なら主こそ大切にするべきだろう」と意見する。

「とにかく、師匠は俺だ。宮司は俺が勤める。おむすびはお前が握れ。明日一番に来た祈願者の願いを聞き届ける。分かったな」

有無も言わさぬ眼力で、縁はそう言うとビーチチェアから身を起こした。そして、「もう寝る」と言ってお社の方に行ってしまった。

「――嘘でしょう……」

我に返った結は頬に手を当て、叫びだしそうになるのを必死で(こら)えた。