〈空と湖の青と木々の緑。それから、朱塗りのお(やしろ)がお伽噺(とぎばなし)の一場面みたい〉
〈ミニチュアみたいなお社がかわいい!〉

そんな好意的な感想が次々に書き込まれた。
しかし、次第に――。

〈恋神神社の〝恋神〟が、御利益に〝恋の成就〟を授けるって本当?〉
〈本当! だから、参拝者は片想いの人か結婚を願うカップルが多いみたい〉
〈でも、御利益が授かるのは御守りじゃないよ!〉
〈そうそう! 宮司様が授けて下さる〝おむすび〟に込められているんだよ〉

と、まことしやかに、何とも摩訶(まか)不思議なコメントが書き込まれ始めた。

だが、人間とは不可思議と思えるようなものに惹かれる傾向があるようだ。
恋する者にとって――いや、恋をしていない者にも、恋神神社は十分興味深い神社となった。

これに尾ひれが付き、さらなる噂が流れたのは程なくしてだ。
その噂とは――。

〈恋神神社には、おばあちゃん宮司様と十代のかわいらしい巫女さんがいらして、その二人がなんと! その〝恋神様〟なんだって。驚きでしょう?〉

と、そんな噂だった。

その噂に対しては、肯定論否定論と様々な意見が飛び交い、そのSNSは間もなく炎上した――と同時に、恋神神社に対するコメントがあちこちに飛び火して、それを見た人々で神社もまた騒然となった。

しかし、それはほんのひと時のことだった。湖面に描かれた波紋(はもん)()ぐように、自然に静かにすぐ(おさ)まった――まるで神が火消しを行ったかのように……。