結が褒めるとカイは「恐縮です」と礼を述べ、チラッと縁を見る。と――。
「くそっ、俺が答えたかったのに」と、縁はブツブツ呟きながら突然話題を変えた。

「確認だが、祈願者には御利益としておむすびを授けるんだったな?」
「はい、そうです。ですが、ただ授けるだけではありません」
「というと?」

縁の代わりにカイが尋ねる。

「そう言えば、ご説明がまだでしたね。簡単にご説明すると、祈願者はまず拝殿でご祈祷を受け、次に、恋神茶寮に移り、そこでおむすびを食します」
「それに御利益が込めてあるんだろう?」

結は「違います」と静かに(かぶり)を振った。

「おむすびは祈願者の願いに合わせて握ります。祈願者はそれを召し上がり、召し上がった物と同じおむすびを握らなくてはいけないのです」

縁とカイが首を傾げる。

「どういう意味だ?」
「おばば様曰く。ローマは一日にして成らず、だそうです」
「なかなか(いき)な喩えでございますね」

カイにはその意味が分かったようだ。だが、縁は首を傾げたまま、「具体的に言え」と命じる。

「おばば様はいつも具体的にお教え下さいません。だから、私が解釈するに、努力無くして実り無し、ということだと思います」
「それは、同じおむすびを握れるように努力して、握れた時に初めて願いが成就する、ということか?」
「――それを想う相手に食べてもらえた時に! です」
「恐ろしく面倒な御利益だな?」

顔を(しか)める縁に、「はい、確かにそうです」と結は笑う。