「そうですね、何かが足りないような気がします……何だろう?」
「あっ、分かった! 〝幸せ〟だ」

大発見でもしたかのようにハクが大声を上げた。

「縁様の料理は確かに完璧だけど、幸せを感じないんだ」
「幸せ?」
「やはり大神様は素晴らしい方でございますね」

ここでどうして大神様が出てくるのだろうと結は思ったが、縁がここに送られた理由がその『幸せ不足の料理』が関係するのかもと考える。

――いろいろと絡んだ糸は多そうだけど……。

結は楽しげなカイを眺めながら、それでも縁がここに送られてきた根本的な理由は……自分が半人前以下の恋神だからだと改めて自分を情けなく思う。

「とにかく、早く一人前の恋神にならなくちゃ!」

でないと、おばば様が戻ってこない。フンと鼻息荒く結はおむすびに齧り付く。そして、力を付けるようにムシャムシャ食べ始めた。

そのあまりに豪快な食べっぷりに、縁の表情が少し緩む。

「お前も相当腹が減っていたんだな」
「腹が減っては戦はできぬです」

間髪入れず答える結に、ハクは、それは僕が言った台詞だよ、と脳内で突っ込みを入れる。

「何と戦うというのだ?」

縁が皮肉を込めて()くと、結は「縁様です」と答えた。

「俺? 何だそれ?」

顔にクエスチョンマークを貼り付け、「まぁ、精々頑張れ」と鼻で笑う。

「何はともあれ、やる気になったのは良いことだ」
「縁様、何を他人事のように! 貴方様が頑張らずして結様の成長はありません!」

カイはギロリと縁を睨みピシャリと言い放った。