そして、数分後。縁がトンとテーブルの上に置いたのは……黄金色をした見事な卵焼きだった。

「これ、縁様が作ったんですか?」

吃驚仰天(きっきょうぎょうてん)という顔で結が()くと、「他の誰が作ったと言うんだ」と縁がムッとする。

「実は、縁様は料理がご趣味でして……それが何かと問題の種でして……」
「趣味ではない! これを生かせるような仕事がしたいと思っている。それの何が悪い!」

どうやら大神様との確執は、縁の素行以外に料理にもあるらしい、と結は悟る。

「大神様は悪いとは仰っていません」
「なら、あの態度は何だ?」
「態度をあれこれ述べるなら、縁様だって」
「縁様の卵焼き、確かに見た目も味もいいけど……」

縁とカイの言い合いの合間に、またしてもハクが言葉を挟む。

「けど、何だと言うんだ、言いたいことがあるならハッキリと言え!」
「うわっ、怒らないで!」

ビクビクと震えるハクに「大丈夫ですよ」とカイが微笑みかける。

「うん……美味しいけど、結様の方が僕は好きって言いたかったんだ」

縁にビクつきながらも、マイペースなハクらしい台詞だった。
クッとカイが口元にシニカルな笑みを浮かべる。

「なるほど、分かる方には分かるのですね。縁様の料理が趣味程度の物だと」
「どこがだ!」

激怒しながら、縁は自分の作った卵焼きと結の作った卵焼きを食べ比べる。その横で結も二つを交互に口にする。そして――。