「結様はまだ半人前の恋神様だけど、おむすびの出来は上々っておばば様も言ってた」

鼻高々に言うハクに、「本当にご自慢の主様なのですね」とカイが微笑む。

だが縁は、「おむすびはまぁまぁだが……」と揚げ足を取るように、テーブルの中央に鎮座(ちんざ)する茶色い物体を(はし)(つま)んだ。

「おむすび以外は……何だこれ?」
「縁様、お言葉ですが、見た目はちょっと(いびつ)ですが……」
「ちょっとぉ?」

縁の鋭い視線がハクに向く。

「いえ、だいぶん。でも、味は……かなりイケますよ」

もそもそとハクが結を(かば)うと、「絶妙なお味です」とカイが舌鼓を打ちながら、「縁様も文句を言う前に食してみて下さい」と(すす)める。

縁は仕方なく、といった様子でおそるおそる卵焼きらしき物体を口に入れ、「おっ」と感嘆の声を漏らした。

その驚きの顔を見ながらハクが嬉しそうに口角を上げる。

「ねっ、美味しいでしょう?」
「ああ、だが、この見た目は頂けない。こんなのは料理と言えない。だろう?」

「確かに」と、これにはカイもハクも賛同する。
「だって……」と、ションボリする結に代わってハクが説明する。

「結様は、おむすびの練習だけをしていらしたもので……」
「なるほどな……そういうところも半人前ということか」

深い息を吐くと、縁は「ちょっと待っていろ」と言ってキッチンに向かった。

「縁様はどうされたのですか?」

ハクがカイに尋ねる。が、カイは面白そうに成り行きを見守るだけで返事をしなかった。