地図を眺めるとその県の大部分が湖だと気付くだろう。
湖の名は琵琶湖(びわこ)

地母神(じぼしん)(大地の母である母なる神)に(なら)い、母なる湖〝マザーレイク〟とも呼ばれる日本で一番大きな湖だ。

だが、アピールポイントはそれだけではない。
世界に二十箇所しかないと云われている古代湖(こだいこ)(十万年以上存続している湖)の一つでもある。

しかし、これだけ異彩(いさい)を放っているにもかかわらず、滋賀(しが)県の――琵琶湖の人気はイマイチ、どころか知名度さえ無きに等しい……と言っても過言ではないだろう。

「滋賀県? 琵琶湖? それどこに有るの?」そう問われるのがオチだった。

それは(ひとえ)に、近隣が観光地でもメジャーな京都、大阪、名古屋など有名処ばかりでスルーされてしまうから、ということも有るが……真の理由は定かではない。

そんな知名度薄な県の湖が、ある日、とあるSNSの噂で『トレンドな話題』にピックアップされた。

発端となったのは一枚の写真だった。【ロケーションが最高に美しい湖!】そんなタイトルを付けられた写真には、文字どおり見事な眺望(ちょうぼう)が写っていた。

〈そこ知ってる!〉
〈その畔に神社があるでしょう?〉
恋神(こいがみ)神社だ!〉

写真のコメント欄には瞬く間にメッセージが寄せられ、さらに、別の写真が二枚続けて上がった。

【夜間から明け方にかけて乳白色の(もや)に包まれた幻想的な恋神神社】
【靄が晴れて輝く朝日に照らされた小さくてかわいい恋神神社】

それを目にした人たちから――。