「お?」
「家の鍵だ。知ってんだろ都内のマンションの最上階から三番目。
セキュリティ番号2865、クローゼットに腐るほどお望みのスーツ入ってる。好きなん持ってけ」
「さすが…リッチは違うわ
どうしたらそんな金持ちなれんの」
「働いてんだよ!!」
「出てけ」と一喝し、同級生でフリーター・伊野雄介を蹴っ飛ばし追い返してから間もなく、アポの客が曲がり角から入れ違いで姿を現し
その時ばかりはにこりと微笑む。
「すいません先生?先程事務所の前まで出向きましたら酷い怒鳴り声が聞こえたんですが…
まさか先生じゃありませんわよね?」
「まさか。先程アポ無しで来られた男性がどうしても今から相談に乗ってくれと仰るので、また時間を改めてお越しくださいと申し上げたまでですよ」
「まぁ、先生ったらお忙しい中お若いのに仕事もしっかりこなして…更に器も大きい方なんですね、尊敬しましたわ!」
「ははは…」
心中で、あいつまさかスーツ全部持っていかねえよな。いや。まず置場所がないよなと考えていたのは秘密にしておこう。
アグレッシブルーキー/終&おまけ
【仕事終了後・渥美と伊野のメールやりとり】
伊野
今日は本当助かった
お陰で明日も食い繋いで行ける
渥美
それは良かったな。
ところでどこに就職の面接行ったんだ?
伊野
面接なんて行ってないよ
渥美
ちょっと待て
どういうことだ、じゃあスーツは
伊野
質屋に行って売った
それ以降、メールの返信はしていない
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