翌日から私の仕事は始まった。
 私に与えられた仕事は主に雑用、布団のシーツ替えとか客室の掃除、ゴミの回収等である。
 屋敷にいる時はメイドがやっていたのを見ていたけど、こんなに重労働とは思わなかった。
「何事も経験してみる物ね・・・・・・。」
 当たり前だと思っていた事は決して当たり前ではなかった。
 貴族が如何に優遇されていた立場だった、という事を庶民になって初めて理解した。
 だからと言って貴族に戻ろうなんて事は思わないけどもね。
 そして、仕事を初めて1ヶ月が経過した。
「シャルちゃん、今月分の給料だ。」
「ありがとうございます!」
 初めての給料を貰った。
 自分で働いて稼いだ初めてのお金だ。
 感慨深い物がある。
「シャル、せっかくだから美味しい物食べに行こう!」
 私はカタリナに誘われて近所の喫茶店に行った。
 この1ヶ月で私はカタリナとは仲良くなった。
 同い年と言う事もあり、すっかり意気投合してすっかりタメ口で話せる関係になった。
 喫茶店に着いた私達は早速注文をした。
「シャルは何を食べるの?」
「う~ん・・・・・・、苺パフェで。」
「じゃあ私もっ! 苺パフェ2つお願いします!」
「かしこまりました。」
 注文をして数分後に苺パフェが到着した。
 この町に来てから甘い物を食べてないから見ただけで唾が出てくる。
 スプーンですくって口の中に入れる。
「美味しい・・・・・・。」
「此処って王都の有名なスイーツ店で修行したらしいよ。きっと貴族もこんな美味しい物を毎日食べているんだろうなぁ~。」
「う~ん、貴族でも貧乏な所もあるし毎日美味しい物を食べてる訳じゃない、と思うな。」
「そうなの?」
「だってドレスが着れなくなっちゃう。」
「あっ、そっか。」
 これは本当の話で私は体調管理を厳しく管理されていて食事もなるべくバランスの良い物を食べていた。
 スイーツなんて年に1回食べれれば良い方だ。
 妹達はおやつとか平気で食べているのを見て羨ましい事もあった。
「そういえば、お客さんから聞いた話なんだけど今、王都で、ある貴族の令嬢が行方不明になってるみたい。」
 その話を聞いてドキッとなった。
「へぇ~、どんなの?」
「私も詳しくはしらないけど、いきなり行方を眩ましたんだって。最初は誘拐されたんじゃないか、て噂もあったけど、どうもその令嬢が実家で虐待を受けていたみたいでそれが嫌になって家出したんじゃないか、て。」
 私、虐待受けていた事になってるんだ。
 まぁ、暴力は受けてないけど嫌みとか悪口陰口は叩かれていたのはわかっている。
 庶民にまで拡がっている、という事は貴族間にも既に広まっているはずだ。
 プライドだけは高い父にとってはかなりのダメージになるだろう。
 内心『ざまぁみろ』と思った。