「確か此処よね・・・・・・」
 私はギルドから紹介された宿屋の前に立っていた。
 2階建ての普通の宿屋だ。
 看板には『民宿レギントス』と書かれている。
 多分、冒険者とか専門の素泊まりの宿だと思う。
 こういう所は貴族は使わないだろうから私的にはOKだ。
 さっそく扉を開けて中に入る。
「はい、いらっしゃい」
 素朴そうなおじさんが受付にいた。
「私、ギルドから紹介されて来たシャルと言いますが」
「おぉっ! ギルドから話は聞いてる。そっちの椅子にかけてくれ」
 そう言われて私は空いている椅子にかけた。
「私はこの宿の主のレギントスだ。見ての通りの旅人専門の安宿だ。従業員は私を含めて5人なんだが人手が足りなくてな・・・・・・。それでこういう仕事は初めてか?」
「はい、初めてですが一応家事全般は出来ます」
「へぇ、見た感じ育ちが良さそうに見えるが・・・・・・」
「見た目だけですので」
 ここはキッパリと言っておいた方が良いだろう。
「うん、即戦力になるのはありがたい。今日からよろしく頼むよ」
「よろしくお願いします。ところで住み込みと聞いたんですが・・・・・・」
「あぁ、裏に空き家があるからそこを使うと良い。おーい、『カタリナ』!」
「お父さん、何か用?」
 2階にあがる階段から赤髪の少女が顔を出した。
「この子は今日から働く事になったシャルちゃんだ。裏の空き家に住んでもらう事になったから案内してやってくれ」
「わかったわ。私、カタリナて言うの。よろしくね。」
「シャルて言います。よろしくお願いします」
 無邪気な笑顔のカタリナを見た私は内心ドキッとなった。
 何故なら確かあの映像で王太子様の横にいた少女とカタリナが似ていたからだ。
 思い過ごしかもしれないけど・・・・・・。

 私はカタリナに案内されて空き家に到着した。
 結構広くて家具は備え付けてあって申し分もない。
「困った事があったらなんでも言ってね」
「はい、あの他の従業員の方は?」
「地元の人だから自宅から通っているの。ここに入るのはシャルさんが初めてだよ」
「じゃあ、今まで使われて無かったんですか?」
「うん、お父さんが宿を始める時に作ったんだけどね」
 そう言って苦笑いするカタリナさん。
 とりあえず、住む場所を得られたので良かった。
 その日の夜は私の歓迎会を開いてくれて賑やかな夜になった。